この前、電気系の資格を取るために勉強してたんですけど、、、
「これこういう意味だったのか…」とか、
「え、端的すぎて意味わかんないんだけど…」とか、
いろいろ思ったんですよね。
その中でいくつかピックアップしてメモを残すことにしました。
目次
①(俺が)間違って覚えてたこと
皮相電力
※(ここでは、電気理論の話になるので、虚数単位は「\(i\)」ではなく「\(j\)」とします!)
皮相電力とは、交流電気回路で出てくる
「有効電力(実際に外部に仕事をする電力)と無効電力(電圧と電流がズレた結果、損にみえるなにか)をまとめたもの」
なんですが、ずーーーーーーーーーーーーーーっと、
\(皮相電力S=電圧E×電流I\)
だと思ってたんですよね。
どうやら違うぞ、と。
・電圧ベクトルと電流ベクトルの内積
皮相電力は、結局「電圧と電流の積」ではあるんですが、
どうやら「電圧と電流の『内積』」を取ってる模様です。
で、「電圧ベクトル」と「電流ベクトル」を定義しておこうと思います。
\(\begin{cases}電圧ベクトル\boldsymbol{e} =(e_1,e_2,e_3,…,e_n)\\電流ベクトル \boldsymbol{i}=(i_1,i_2,i_3,…,i_n)\end{cases}\)
とします。ここで、各成分は
(下付き数字)番目の負荷(各負荷に重複なく適当に付番)に掛かる電圧とそこに流れる電流
のことを指します。
ちなみに、成分になっている電圧と電流はすべて位相差を含んだ「複素数」です。
そして、この「電圧ベクトル」と「電流ベクトル」について内積を取ると~?
ベクトルの内積は同じところの成分を掛けて全部足せばいいんだっけね!
\(\boldsymbol{e} ・ \boldsymbol{i}=e_1 i_1+e_2 i_2+e_3 i_3+…+e_n i_n\)
出た!
……
……………………
というのは間違いでして。内積はエルミート形式でお願いしたいところ。
なにそれ?つって。
・成分が複素数の内積
さっきボソッと「成分は複素数」と書いたんですが、ここが重要なところでして、
まず、内積はあるベクトル\(\boldsymbol{x}\)のみについて、
内積を\(\langle\boldsymbol{x},\boldsymbol{x}\rangle\)と書くことにすると、
① \(\langle\boldsymbol{x},\boldsymbol{x}\rangle∈\mathbb{R}\)
② \(\langle\boldsymbol{x},\boldsymbol{x}\rangle≧0\)
となる「正定値性」という性質があるんですよね。
んで、①の性質について考えてみると、
とりあえず\(\boldsymbol{x}=(x_1,x_2)\)としてあげておいて、
「内積は同じところの成分を掛けて全部足す」操作なので、
\(\langle\boldsymbol{x},\boldsymbol{x}\rangle={x_1}^2+{x_2}^2\)となります。
\(x_1\)と\(x_2\)が実数なら満たしますが、ところがどっこい。
複素数だとどうでしょう。
複素数になってしまいますよ、と。じゃあどうすんの?
じつは、複素数を100%実数にする方法があります。それが…!
絶対値!
複素数\(z\)の絶対値\(|z|\)は、\(z\)の共役(虚部の正負が逆になるやつ)\(\overline{z}\)を使って、
\(|z|^2=z \overline{z}\)
で、
\(|z|∈\mathbb{R}\)
ですよ、と。ついでに、
\(|z|≧0\)
ですよ、と。
もうこれ、使うしかねぇな!?(©カミナリ)
ということで、どちらかのベクトルの成分を共役にしてあげたいんですよね。
まぁめんどいので、かっこの後ろのほうに共役になってもらいましょう。(どっちでも同じになります)
\(\begin{eqnarray}\langle\boldsymbol{x},\boldsymbol{x}\rangle&=&\boldsymbol{x}・\overline{\boldsymbol{x}}\\&=&x_1 \overline{x_1}+x_2 \overline{x_2}\\&=&|x_1|^2+|x_2|^2\end{eqnarray}\)
という感じ。複素数を成分に持つベクトルの内積は「後ろのベクトルについて共役を取ってから」というルールがありそう。
というかこれがエルミート形式。
ちなみに、異なるベクトル同士の内積は必ずしも実数にならないので注意です。
ベクトル\(\boldsymbol{x}=(x_1,x_2)\)と\(\boldsymbol{y}=(y_1,y_2)\)の内積について、
\(\begin{eqnarray}\langle\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\rangle&=&x_1 \overline{y_1}+x_2 \overline{y_2}\end{eqnarray}\)
なので、上手いこと虚部が消えるか、\(\boldsymbol{x}=\boldsymbol{y}\)じゃないと実数にならないわけですな。
…
ちなみに、物理学(量子力学)だと、この内積の書き方が
\(\langle\boldsymbol{y}|\boldsymbol{x}\rangle(=\langle\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\rangle)\)
とかなったり………(左側のを共役取るパティーン)
今回は数学的な書き方でいきまーす(小声)
・積の順番は?
じゃあ内積が分かったところで、もう一度\(\boldsymbol{e}\)と\(\boldsymbol{i}\)の内積を取り………たいところなんですが、
そういえば順番どうなのよ?と。
\(\langle\boldsymbol{e},\boldsymbol{i}\rangle\)と\(\langle\boldsymbol{i},\boldsymbol{e}\rangle\)のどっちが正しいのよ?と。
(エルミート対称性で、単純に積を交換すると結果が変わります☝)
そもそも、皮相電力\(S\)は
「有効電力\(P\)を電圧と電流(時変数tに依存しない位相差θを含む)の積を1周期積分して平均を取って導出」
するとちょうど残ってくる「電圧と電流の位相差\(θ\)による\(\cos θ\)」ありきの定義なんですよね。
計算式でいうと、
\(\begin{eqnarray}P&=&\frac{1}{T}\int_0^TE_m\cos(\frac{2π}{T}t)I_m\cos(\frac{2π}{T}t+θ)dt\\&=&EI \cos θ[W]\end{eqnarray}\\ただし、E=\frac{E_m}{\sqrt{2}}、I=\frac{I_m}{\sqrt{2}}\)
となります。
コサインがあるならサインもあるんじゃね?ということで、無効電力\(Q\)というのを導入して
\(Q=EI \sin θ[var]\)
と定義してやると、単純な積\(EI\)を表せるので、それ自体も電力(皮相電力)と呼んでやってる、と。
しかも、無効電力も皮相電力も案外いい感じに使える値なんですよね~😊
整理すると、
\(S=EI=\sqrt{P^2+Q^2}[VA]\)
と結びつけることができます。あ、ちょっとまって!
せっかく回路理論は「位相差を含んだ『複素数表示』」で表せる体系なので、「位相差\(θ\)」をこうしちゃいましょう。
\(\begin{eqnarray}S&=&P+jQ\\&=&\sqrt{P^2+Q^2} e^{jθ}\end{eqnarray}\)
とすると位相差情報を持ったままの皮相電力になります。
ここで、RL直列回路の皮相電力を計算してみますか。
抵抗\(R(∈\mathbb{R})\)、誘導性リアクタンス\(X_L(∈\mathbb{R})\)、
そして、電源電圧\(e(∈\mathbb{C})\)
とします。
・RL回路
\(電流i=\frac{e}{R+jX_L}\)
なので、
\(|i|=\frac{|e|}{\sqrt{R^2+{X_L}^2}}\)
これを使って、
\(\begin{eqnarray}P_{RL}&=&R|i|^2\\&=&\frac{|e|^2 R}{R^2+{X_L}^2}\end{eqnarray}\)
\(\begin{eqnarray}Q_{RL}&=&X_L|i|^2\\&=&\frac{|e|^2 X_L}{R^2+{X_L}^2}\end{eqnarray}\)
ということで、皮相電力は
\(S_{RL}=\frac{|e|^2 R}{R^2+{X_L}^2}+j\frac{|e|^2 X_L}{R^2+{X_L}^2}\)
一方で、内積で出すパターンについて考えてみます。
その前に電圧ベクトルと電流ベクトルを作りましょ。
\(\boldsymbol{e}=(\frac{eR}{R+jX_L},\frac{jeX_L}{R+jX_L})\)
\(\boldsymbol{i}=(\frac{e}{R+jX_L},\frac{e}{R+jX_L})\)
この2本立てでいきます。
・\(\langle\boldsymbol{e},\boldsymbol{i}\rangle\)のパターン
\(\begin{eqnarray}\langle\boldsymbol{e},\boldsymbol{i}\rangle&=&\boldsymbol{e}・\overline{\boldsymbol{i}}\\&=&\frac{eR}{R+jX_L}\overline{\frac{e}{R+jX_L}}+\frac{jeX_L}{R+jX_L}\overline{\frac{e}{R+jX_L}}\\&=&\frac{e \overline{e}R}{R^2+{X_L}^2}+j\frac{e\overline{e}X_L}{R^2+{X_L}^2}\end{eqnarray}\)
\(|e|^2=e \overline{e}\)なので、同じ式になりましたよ!
では逆にすると…?
・\(\langle\boldsymbol{i},\boldsymbol{e}\rangle\)のパターン
\(\begin{eqnarray}\langle\boldsymbol{i},\boldsymbol{e}\rangle&=&\boldsymbol{i}・\overline{\boldsymbol{e}}\\&=&\overline{\frac{eR}{R+jX_L}}\frac{e}{R+jX_L}+\overline{\frac{jeX_L}{R+jX_L}}\frac{e}{R+jX_L}\\&=&\frac{\overline{e} eR}{R^2+{X_L}^2}-j\frac{\overline{e}eX_L}{R^2+{X_L}^2}\end{eqnarray}\)
虚部がマイナス…
まぁつまり、
\(\langle\boldsymbol{e},\boldsymbol{i}\rangle=\overline{\langle\boldsymbol{i},\boldsymbol{e}\rangle}\)
でエルミート対称性を見ただけでしたね…ムダナコトシテシマッタ……
結論としては、
「積の順番は『電圧×電流』」ということでございました。
・皮相電力の式はこれだ!
ここまでの話を総合すると、
回路中の負荷\(z_1,z_2,z_3,…,z_n,z_{n+1},…\)に掛かる電圧を列挙した『電圧ベクトル\(\boldsymbol{e}\)』、そこに流れる電流を列挙した『電流ベクトル\(\boldsymbol{i}\)』を考える。
ただし、
\(\boldsymbol{e}=(e_1,e_2,e_3,…,e_n,e_{n+1},…)\)
\(\boldsymbol{i}=(i_1,i_2,i_3,…,i_n,i_{n+1},…)\)
という負荷の総数だけ次元を持つベクトルであり、下添え字は負荷と1対1対応である。
この回路において「皮相電力\(S\)」とは、
\(S=\langle\boldsymbol{e},\boldsymbol{i}\rangle[VA]\)
という内積であらわされる。
という感じ。
俺の理解が改まりました。ほんと。
ちなみに、回路の電圧E(複素数)と電流I(複素数)が分かってるときは
\(S=E\overline{I}[VA]\)
になります。電流は共役を取ってかけてね💖
②そもそも理解できてなかったこと
光に関する量
\(\begin{cases}(全)光束Φ[lm](ルーメン)\\光度I[cd](カンデラ)\\照度E[lx](ルクス)\end{cases}\)
という、コイツらの関係性がよくわかんなかったんですよね。
で、順番に関係性を紐解いてみたので、それもメモ。
・光束と光度の関係
まず、光度\(I\)の定義式として、
\(I=\frac{Φ}{ω}[cd]\\ただし、ωは立体角[sr]\)
が与えられているんですが、立体角を理解できないともう詰みでございます。泣きそう。
じゃあ立体角って何よ?
①立体角を考えるのにまず「半径\(r\)の球」を考えます。
②次に、球の中心から球表面上の一点を指すベクトル\(\boldsymbol{r}\)を考えます。
③その\(\boldsymbol{r}\)を軸にした円錐を考えます。
④円錐底面が球表面よりも外に飛び出してるイメージを考えます。
⑤その円錐に囲まれている部分の「球表面上の表面積\(S\)」を考えます。
その時、
\(立体角ω=\frac{S}{|\boldsymbol{r}|^2}\)
となります。
おおむねこんな感じ。
ラジアンの「2線のなす角度 is 半径1の時の2線間における円周の長さ」
ステラジアンの「立体角 is 半径1の時の指定した部分の球表面積」
それぞれ考え方は同じですね。
別に円錐でなくても角錐だとかでもその部分を囲った球表面積が分かれば立体角が出せるわけです。
すこし自由度が高い「角度」ですな。
で、いわゆる「全球」の立体角は、
\(\begin{eqnarray}全球の立体角Ω &=&\frac{4π|\boldsymbol{r}|^2}{|\boldsymbol{r}|^2}\\&=&4π\end{eqnarray}\)
となりまして、とてもシンプルな形であるわけですなぁ。
これを踏まえて、「全方向の光度\(I_{all}\)」が分かります。
\(I_{all}=\frac{Φ}{4π}[cd]\)
となります。
なんかガウスの法則みあるね。
・光束と照度の関係
照度\(E\)は、
\(E=\frac{Φ}{S}[lx]\\ただし、Sは光束φに対し垂直な面積[m^2]\)
と定義されるんですが、これってつまり
「光束密度」
と言えませんか!ということ。
単位でいえば、
\([lx]=[lm/m^2]\)
となるので、電磁気学でいう電束密度とか磁束密度みたいなものかなぁという感じ。
それってつまり、「照度=光束密度∝明るさの強さ」と言えそうですよね。
そんな感じのイメージ。
・光度と照度の関係
光度\(I\)と照度\(E\)の定義をおさらいしましょう。
光度\(I=\frac{Φ}{ω}\)
照度\(E=\frac{Φ}{S}\)
なんかめちゃくちゃ似てますなぁ…
立体角ωの定義で面積使いましたしねぇ…
!!!
気づいちゃった!!
そう、「とある点においての『立体角』」からは「とある点から発生する光束の方向に垂直な面積」をすぐ出せるわけでございます。
なぜなら、『立体角』はその点から『垂直な面積』で定義されるからです。
(なんか変な論理に聞こえるけど実際そうなので合ってると思います…)
でね?そんな半径\(r\)の球の立体角\(ω\)分だけの表面積\(S\)というのは、立体角の定義で出した式をちょちょっとイジって、
\(S=ω|\boldsymbol{r}|^2\)
と表すことができる、と。
ではこの\(S\)を照度\(E\)の式に代入すると、
\(E=\frac{Φ}{ω|\boldsymbol{r}|^2}\)
となります。んで、そこに光度\(I\)の定義式を代入すると…
\(E=\frac{I}{|\boldsymbol{r}|^2}[lx]\)
という式が出来上がる、というわけでございます。
なお、この式は点光源でしか成立しません。多分。(計算してないので”多分”。)
ところで、この
\(E=\frac{I}{|\boldsymbol{r}|^2}[lx]\)
という式。
これ、資格試験のテキストにそのままいきなり載ってるんですが、
「\(\frac{1}{|\boldsymbol{r}|^2}\)」の物理的な意味わかりづらくないですか?
俺は分からんかったです。「ガウスの法則じゃないの…?」みたいな。
光度\(I\)は「ある立体角中の光束本数」で、光束\(Φ\)は「光束を出せるポテンシャルの大きさ」…的な認識でいるのがいいんですかね?
ちなみに「光束\(Φ\)」は「光源の出す全光束」と考えられるので、「電気力線の本数が電気量の大きさ」の関係性と同じ匂いがしますね。
そんなのもあって、この項目の最初から「(全)光束\(Φ\)」としてました。
わからないことだらけでたのしいね
久々に電気工学をやったんですが、やっぱり考えるのたのしいね!
皮相電力なんかは思い込みに近いものがありましたが、計算するとたしかにそうだわっていう。
順を追えばだれでも理解できるのが理論!
とりあえず試験は終わったのですが、電験とかも欲しくなりました。受けようかな…
この文章は俺が理解を深めようとして書いたものですが、なんとなく「いまいちワカラン…」な方の一助になってくれたらうれしい、いやうれDです。
また疑問が生まれたら追記するかもしれません。そんな感じです。
ばーい👋
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