新型コロナウィルスによる外出自粛……なかなか暇を持て余しております。
こう暇になると、ムダなことを考えがち。
ふと、カップ麺を食べようとして……
お湯作るのめんどいから、水入れてレンジでチンしたらいけないかな……?
つって。
ちなみに「電子レンジ調理不可」って書いてありますが無視しますね😉
という訳で色々考えてみました。以下レポート。
目次
お湯の温度と待ち時間
理想的なお湯と指定の待ち時間
カップ麺は「熱湯」を入れて「指定の待ち時間」待つとおいしく食べられますよね。
というのも、
◎デンプンは温度の高い液体の水で柔らかくなる
◎全体に水を浸透させるのに時間がいる
というのがある(雑説明)ので、「熱湯」と「待ち時間」が重要なわけですな。
んで、再三言うけど、重要なファクターは「温度」と「時間」。
つまりこの2つの数字を掛けたものが重要ですよ、というわけ(©️関暁夫)。
とりあえず、カップ麺の理想状態は「100℃の熱湯」「正確な待ち時間」。
つまり、
$$
温度T=373.15[K]\\公称待ち時間\tau_0=180[s]
$$
というそれっぽい名前で定義しておき、コイツらで
$$\int\limits_{0}^{\tau_0}Tdt$$
という式をつくって解くわけ。実際解いてやれば、
$$\begin{eqnarray}\int\limits_{0}^{\tau_0}Tdt &=& T[t]_{0}^{\tau_0}\\ &=& T\tau_0 \\ &=& 373.15*180\end{eqnarray}$$
ただの掛け算です。入れた理想的なお湯は冷めないという前提。宇宙の法則は無視して、ハイパー理想。
で、待ち時間の方。分かりやすくするために数字を決め打ちにしちゃったんですが、文字の\(\tau_0\)としておいた方が都合がいいので戻しておきましょうか。
温度は標準(?)状態での(液体の)水の最大温度が\(100[℃]\)なので\(373.15[K]\)なんですが、これをとりあえず\(T_{max}\)としておきましょう。のちのち便利になる予感。
総合すると、
$$\int\limits_{0}^{\tau_0}T_{max}dt=T_{max}\tau_0$$
という式になりました。これが理想食べ頃カップ麺状態です。暇なので造語です。
水入れて電子レンジでチンだと……?
さて、重要なファクター「温度」と「時間」。
レンジでチン(以下レンチン)することを考えると、「水の温度が沸点まで徐々に暖まる」ことが考えられます。
そんな「時間変化する温度」と「待ち時間」の積を作るには、
$$時間変化する温度:T(t)\\時間の変数:t\\レンチンしたい時間:\tau$$
としたときに、
$$\int\limits_{0}^{\tau}T(t)dt$$
という「温度を時間で定積分」する式で表せるはずだよ、と。これがレンチン時のカップ麺状態を表す式。
さっき、理想カップ麺状態を出すのにわざわざ積分形式にしてたのは同じ形になるよ~ということを言いたくてムダにそうしました。
で、レンチン時のカップ麺状態は上の積分形式の式で表せる……ということは、レンチン状態式と理想カップ麺状態が一致する時に「レンチンによって理想カップ麺状態になってる」ことが言えるので……
$$\int\limits_{0}^{\tau}T(t)dt=T_{max}\tau_0$$
☝️これを\(\tau\)について解いてやれば、レンチン時間がわかるよ!ということですな。
なお、この方程式を「電子レンジカップ麺方程式」と呼びます。ウソです
とにかく、この方程式が電子レンジでカップ麺を作るときの基礎方程式となります。ホントかどうかは知りません
電子レンジ加熱をモデル化してみる
電子レンジの加熱能
電子レンジの原理は、ものすごく雑に説明すると……
「マイクロ波(波長がマイクロメートルオーダー)」という電磁波を庫内で作り出して食材に浴びせると、そのエネルギーを食材中の水分子が吸収して熱に変わる
という感じなわけです。
つまり、水以外の物質はほぼ加熱されません。ほぼ。(原理的には水と似た性質の分子だと加熱されるので「ほぼ」)
今回のモデル化にあたって、「水を注いだカップ麺において、電子レンジが作用するのは水のみ」と大胆にモデル化します。
そうしないとマジで無理なので🥺
さて、電子レンジには「ワット数」が表記されてますが、これは「1秒間あたりに食材中の加熱可能な物質に与えるエネルギー量」を表してます。そんなような記述をどっかでみました。
これはすでに「庫内の空間全体で積分した結果」だと思います。だと思います。思います。
……その前提で、表記ワット数が全て「注いだ水」にエネルギーを与える、と考えます。
ということを踏まえて、次に考えるべきは…………
水の温度とエネルギー
カロリー
って聞いたことがある方も多いでしょう。
カロリー、それは………………
「1gの水の温度を1℃上げるためのエネルギーは1cal」というエネルギーの単位!
この文章を式にしてみると、
$$1[cal]=k[cal/℃]×1[g]×1[℃/g]\\但し、水の場合はk=1$$
まぁ、カップ麺に硫酸とかアンモニア水入れるヤツも稀だと思うので、\(k=1\)でいきましょう。
ところで、カロリーが「水の質量」に対してしか言ってない件。
大体カップ麺に書いてある「水量」は体積である「ml」表記なんですよね。
水は、
$$4℃のとき、\frac{質量[g]}{体積[ml]} \simeq 1.00\\100℃のとき、\frac{質量[g]}{体積[ml]} \simeq 0.96$$
といった感じなので、めんどくさいから全温度で1にしときましょう。
電子レンジ×水
以上で出したことを組み合わせると、電子レンジが水に与えたエネルギーで上がる温度について、
$$上昇する温度T_{レンチン}(t)=\frac{Pt}{1[cal]w}\\ \left\{\begin{array}{1}t:時間[s]\\ P:レンジの出力[W]\\ w:水量[ml]\end{array}\right.$$
という式を立てられます。あ、そうだ。
レンジの出力は\([W]=[J/s]\)なので、カロリーをジュールに変えましょう。
近似しすぎてるので、有効数字とかもうどうでもいいんですが、\(1cal=4.18J\)として、
$$上昇する温度T_{レンチン}(t)=\frac{Pt}{4.18w}$$
という式をたててやります。んで、これを「加熱前の水温」に足してやれば、レンチンした時間でどれだけ加熱できたかがわかる訳ですよ。
そんで、
$$温度T(t)=T_0+T_{レンチン}(t)\\(T_0:水の融点[K])$$
あ、でも!この\(T_{レンチン}\)、\(t→\infty\)で明らかに発散するんですけど……
何が言いたいかっつーと、「(標準状態の)液体の水は100℃までにしかならない」ので、無限大の時間かけて100℃以上になられると困るよー😞という。
いやまあ当然、水は100℃以上にはなるんですが、それは気体の水。カップ麺に気体の水を注いだら焼けそうですね。
色々調べてみると、やはり加熱したときの温度の時間グラフは直線ではなくだんだん勾配が緩やかになって、沸騰直前では温度が上がりづらくなる模様。
ということで、よくわかんないけど物理でよく出てくる\(1-\mathrm{e}^{-ax}\)というヤツを当てはめることにします。当てはめることにしました。
もうひとつ条件をつけさせて下さいな。さっきのやつ。
\(\frac{P}{4.18w}\)という比例定数を水の融点\(T_0\)付近での勾配にしたいです。せっかく出したので。MOTTAINAIの精神。
この条件を踏まえて、
$$\left\{\begin{array}{1}T_{レンチン}(t)=\alpha (1-\mathrm{e}^{-\beta t})\\T(t)=T_0+T_{レンチン}(t)\\T(\infty)=T_{max}\\\frac{d}{dt}T_{レンチン}(0)=\frac{P}{4.18w}\end{array}\right.$$
という連立方程式から\(T_{レンチン}(t)\)の係数を導いてみましょ。
$$\left( \begin{eqnarray}T(\infty)&=&T_0+\alpha (1-0)\\&=&T_{max}\\∴\quad \alpha &=& T_{max}-T_0\end{eqnarray}\right.$$
という\(\alpha\)と、
$$\left( \begin{eqnarray} \frac{d}{dt}T_{レンチン}(t) &=& \alpha (-\beta )(-\mathrm{e}^{-\beta t})\\ &=& \alpha \beta \mathrm{e}^{-\beta t}\\ \frac{d}{dt}T_{レンチン}(0) &=& \alpha \beta \\ &=& \frac{P}{4.18w} \\ ∴ \quad \beta &=& \frac{P}{4.18w \alpha } \\ &=& \frac{P}{4.18w (T_{max}-T_0)}\end{eqnarray}\right.$$
という\(\beta\)が出ました。
いちいち\(T_{max}-T_0\)って書くのもめんどくさいので、
$$T_{max}-T_0=\Delta T$$
と置いておきましょう。これで手が楽に✍️
温度の式完成
という訳で、レンチン時の温度の式
$$T(t)=T_0+\Delta T(1-\mathrm{e}^{-\frac{Pt}{4.18w\Delta T}})$$
ただこれ、「水を”水の融点”から加熱する式」なんですよね。常温の水でなく。
それを解消するのに、「電子レンジで常温まで加熱したあとの世界線」にしちゃればいいじゃーん!😮☝️という。安易に考えていきましょう。
すこしさっきの式をイジって、
$$T(t)=T_0+\Delta T(1-\mathrm{e}^{-\frac{P(t_0+t)}{4.18w\Delta T}})\\(t_0:常温まで加熱した時間[s])$$
と。じゃあ\(t_0\)はなんぼなんだよ!ということで、さっきの\(t_0\)が入ってない式を使って、
$$T(t)=T_{now}となるt$$
を求めてみましょう。
「今の水温」を盛り込む
さっきの等式はつまり、
$$T_0+\Delta T(1-\mathrm{e}^{-\frac{Pt}{4.18w\Delta T}})=T_{now}$$
という感じ。
$$\Delta T(1-\mathrm{e}^{-\frac{Pt}{4.18w\Delta T}})=T_{now}-T_0\\1-\mathrm{e}^{-\frac{Pt}{4.18w\Delta T}}=\frac{T_{now}-T_0}{\Delta T}\\\mathrm{e}^{-\frac{Pt}{4.18w\Delta T}}=1-\frac{T_{now}-T_0}{\Delta T}$$
両辺自然対数をとり、
$$-\frac{Pt}{4.18w\Delta T}=\log(1-\frac{T_{now}-T_0}{\Delta T})\\t=-\frac{4.18w\Delta T}{P}\log(\frac{\Delta T-T_{now}+T_0}{\Delta T})$$
\(\Delta T=T_{max}-T_0\)なので、
$$\begin{eqnarray}t&=&-\frac{4.18w\Delta T}{P}\log(\frac{T_{max}-T_{now}}{\Delta T})\end{eqnarray}$$
\(T_{max}-T_{now}=\delta T\)とおいて、
$$\begin{eqnarray}t&=&\frac{4.18w\Delta T}{P}\log(\frac{\Delta T}{\delta T})\end{eqnarray}$$
この\(t\)を\(t_0\)としてあげたいと思います。
ということで、
$$\left\{\begin{array}{1}T(t)=T_0+\Delta T(1-\mathrm{e}^{-\frac{P(t_0+t)}{4.18w\Delta T}})\\t_0=\frac{4.18w\Delta T}{P}\log(\frac{\Delta T}{\delta T})\end{array}\right.$$
これを組み合わせると、
$$T(t)=T_0+\Delta T(1-\frac{\delta T}{\Delta T}\mathrm{e}^{-\frac{Pt}{4.18w\Delta T}})$$
もしくは
$$T(t)=T_{max}-\delta T \mathrm{e}^{-\frac{Pt}{4.18w\Delta T}}$$
まぁ、下のほうがシンプル。下を採用します。
温度の式ができたので積分するぞ
さあメインコンテンツです。最初のほうに出した
$$\int\limits_{0}^{\tau}T(t)dt=T_{max}\tau_0$$
に、さっき出した\(T(t)\)を入れてみましょ。わくわく。
$$\int\limits_{0}^{\tau}(T_{max}-\delta T\mathrm{e}^{-\frac{Pt}{4.18w\Delta T}})dt=T_{max}\tau_0$$
なるほど。なんかかっこいいですね(主観)。
では早速左辺の積分を解いてみましょう。すぐ終わります。
$$\int\limits_{0}^{\tau}(T_{max}-\delta T\mathrm{e}^{-\frac{Pt}{4.18w\Delta T}})dt\\=T_{max}\tau -\delta T\int\limits_{0}^{\tau}\mathrm{e}^{-\frac{Pt}{4.18w\Delta T}}\\=T_{max}\tau +\frac{4.18w\Delta T \delta T}{P}(\mathrm{e}^{-\frac{P\tau}{4.18w\Delta T}}-1)$$
というわけで、つまり、
$$\tau +\frac{4.18w\Delta T \delta T}{PT_{max}}(\mathrm{e}^{-\frac{P\tau}{4.18w\Delta T}}-1)-\tau_0=0$$
という式を\(\tau\)について解けばおっけー。
ただ、指数にもあったりして俺にはムリなので……
Wolframちゃんに解いてもらいまーす!
すると、
但し、\(W_0\)はランベルトのW関数の主枝です。
カップ麺作るだけなのにランベルトW関数……
ランベルトW関数とは\(f(x)=x\mathrm{e}^{x}\)の逆関数という。\(f^{-1}(z)=W(z)\)みたいな。
\(x\mathrm{e}^{x}\) は同じ値になるxが複数あるんですが、それはつまり\(W(x)\)は多価関数になるということ。んで、そのうち(グラフ的に)上に向かってくのを主枝と言う、と。そういうわけです。
じゃあ実際にレンチン時間を出してみましょう。
温める時間を出す
ランベルトW関数も簡単に計算することは不可能なので、もう結果だけ出しますね。
諸条件
・電子レンジの出力は\(500W\)
・水道水の水温は\(20℃\)
とします。
加熱時間
◎日清カップヌードル
$$公称必要水量w=300[ml]\\公称待ち時間\tau_0=180$$
とすると、
$$\tau=210.545[s]$$
◎日清カップヌードル カレー
$$公称必要水量w=390[ml]\\公称待ち時間\tau_0=180$$
とすると、
$$\tau=213.595[s]$$
みたいな感じ
水入れてこの時間だけチンすればオーケー👌
しかし、そう甘くはなかった……
実は、水量が多くなるとこの結果と合わなくなっていきます……
公称水量が多いほど加熱が足りなくなるんですよね……
というわけで、まだまだ「#StayHome」だと思うので、改良を加えます。。。
※次回へのヒント「糊化しだす温度」「シグモイド」「フタの金属」
では、今回はここでばーい👋
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